jiyouの日記

2007-11-07富木入道殿御返事 (願望仏国事)

富木入道殿御返事 (願望仏国事)

【ときにゅうどうどのごへんじ】


文永八年十一月 五十歳御作

於佐渡塚原

 此比(このごろ)は十一月の下旬なれば相州鎌倉に候し時の思には四節の転変は万国皆同じかるべしと存候し処に此北国佐渡の国に下著候て後二月(ふたつき)は寒風頻(しきり)に吹て霜雪更に降らざる時はあれども日の光をば見ることなし、八寒を現身に感ず、人の心は禽獣(きんじゅう)に同じく主師親を知らず何(いか)に況(いわん)や仏法の邪正・師の善悪は思もよらざるをや、此等は且く之を置く。

 去十月十日に付られ候し入道・寺泊より還し候し時法門を書き遣わし候き推量候らむ、已に眼前なり仏滅後二千二百余年に月氏・漢土・日本・一閻浮提の内に天親・竜樹内鑑冷然外適時宜(ないがんれいねんげちゃくじぎ)云云、天台・伝教は粗(ほぼ)釈し給へども此を弘め残せる一大事の秘法を此国に初めて之を弘む日蓮豈(あに)其の人に非ずや。

 前相已に顕れぬ去(いぬる)正嘉の大地震前代未聞の大瑞(だいずい)なり神世十二・人王九十代と仏滅後二千二百余年未曾有の大瑞(だいずい)なり神力品に云く「仏滅度の後に於いて能く是の経を持つが故に諸仏皆歓喜して無量の神力を現ず」等云云、「如来一切所有之法(にょらいいっさいしょうしほう)」云云、但此の大法弘まり給ならば爾前迹門の経教は一分も益なかるべし、伝教大師云く「日出て星隠る」云云、遵式(じゅんしき)の記に云く「末法の初西を照す」等云云、法已に顕れぬ、前相先代に超過せり日蓮粗(ほぼ)之を考勘うるに是時の然らしむる故なり経に云く「四導師有り一を上行と名く」云云又云く「悪世末法時能持是経者(あくせまっぽうじのうじぜきょうしゃ)」又云く「若接須弥擲置他方(にゃくせつしゅみてきちたほう)」云云。

 又貴辺に申付けし一切経の要文智論の要文五帖一処に取り集め被(ら)るべく候、其外論釈の要文散在あるべからず候、又小僧達談義あるべしと仰らるべく候流罪の事痛く歎せ給ふべからず、勧時品に云く不軽品に云く、命限り有り惜しむ可からず遂に願う可きは仏国也云云。

文永八年十一月二十三日

日蓮花押

富木入道殿御返事

小僧達少少還えし候此国の体為(ていたらく)在所の有様問い有る可く候筆端に載せく候。