出家

出家

【しゅっけ】


出家」ということば、そしてまた、「出家」を実質的に指す別のことばの、インドにおける原語(サンスクリット語)をいくつか列挙し、その意味を考えてみる。「出家」の理念のあらましをつかむには、これがいちばん手っ取り早い方法だからである。

 1.プラヴラージャカ。女性形はプラヴラージカー。「出ていく」を意味するプラヴラージュという動詞語根からの派生語。「出家」「出家する」のイメージにもっとも近い。

 2.パリヴラージャカ。女性形はパリヴラージカー。「ぐるぐると歩き回る」を意味するパリヴラジュという動詞語根からの派生語。別の漢訳語に「遊行」というのがあり、訳語としてはそのほうがぴったりする。内容の上では、「一所不住」という、本来の出家の生活形態をもっともよく表している。

 3.ビクシュ。女性形はビクシュニー。「分け前(とくに食物のにあずかる)」を意味するバジュという動詞語根から派生した意欲動詞語幹で、「食を乞う」を意味するビクシャからの派生語(ビクシャは、もとの動詞語根とは大きくかけはなたれた意味をもつので、最後の短いア音を除いたビクシュが、独立の動詞語根の扱いを受けることが多い)。別の漢訳語に「乞食(こつじき)」というのがあり、そちらのほうが原義に忠実である。また、音写訳語では「比丘」「比丘尼」というのがあり、きわめてポピュラーに用いられる。「托鉢」「托鉢僧」というのも意味は同じである。出家は、金銭、食物などの蓄財をしないので、その日その日の糧は、鉢ひとつをもって近隣の家々をめぐって得るのである。

 4.サンニヤースィン。女性形はサンニヤースィニー。「いっさいを放棄する」を意味するサンニヤスという動詞語根からの派生語。仏教ではなく、ヒンドゥー教の出家の呼称としてよく用いられる。ぼろの衣と鉢一つ以外、原則としていかなるものも所有しない人、そしてまた、世俗的な価値観をいっさい捨て去った人を意味する。

 そのほか、ヤティ、タパスヴィンも、しばしば「出家」を実質的に指すことがあるが、原義は「苦行者」である。非バラモン系の出家はシュラマナ(とことん努め励む人、音写訳語で「沙門」)と呼ばれたりする。

【『仏教誕生』宮元啓一(ちくま新書)】

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