yasuyo-yoの求道辞典

2007-09-22

爾前経

【にぜんきょう】

法華経以前に説かれた諸経教のこと。権教(経)ともいう。天台大師五時教判では、釈尊一代50年の説法のうち、法華・涅槃時に至るまでの42年間の説法(第一華厳時、第二阿含時、第三方等時、第四般若時に属する経教)を総称していう。真実の教である法華経に対して方便の教えである。

五時八教による判釈 

五時のうち華厳時(21日間)、阿含時(12年間)、般若時(14年間、一説には22年間)、の42年間の諸経をいう。爾前経の「爾」の字には「その」とか「この」という意味があり、それ(法華経)に至る前の経という義。天台大師五時を立てて、説時により爾前経法華経を判釈した。四時の経は次のようになる。

華厳時の経──大方広仏華厳経。

阿含時の経──増一阿含経、長阿含経、中阿含経、雑阿含経。方等時の経──勝鬘(しょうまん)経、解深密(げじんみつ)経、楞伽(りょうが)経、首楞厳経、観経、無量寿経、阿弥陀経、金光明経、大日経、蘇悉地(そしつち)経、金剛頂経、維魔経。

般若時──摩訶般若経、光讃般若経、金剛般若経。

八経に判釈することは、十法界事に「若し爾前の中に八教有りとは頓は則ち華厳・漸(ぜん)は則ち三味・秘密と不定とは前四味に亘る蔵は則ち阿含方等に亘る通は是れ方等・般若・円・別は是れ則ち前四味の中に鹿苑の説を除く」(420㌻)と述べられ、また一代聖教大意に「此の円経に二有り一には爾前の円・二には法華・涅槃の円なり」(396㌻)と説かれているが、法華経化法の四教(蔵・通・別・円)と化儀の四教(頓・漸・秘密・不定)の八教に超過しているので「超八の教」という。

爾前経を四味に釈す

五時五味の施化ともいい、釈尊の一代聖教の説時を牛乳を精製する時の五段階の味に譬え、法華経醍醐味をもって最勝の法とし、乳味、酪味、生蘇味及び熟蘇味を前四味と称して爾前経を表している。

爾前経修行

爾前経で説かれている菩薩修行は歴劫修行といい、初発心のあと、三阿増祇百大劫、または動踰(どうゆ)塵劫などの長い修行を経て初めて涅槃に入るとされている。また修行過程の戒律も厳しく、多数の戒が説かれた。小乗教においては五戒、八斎戒、十戒、二百五十戒、五百戒、大乗教でも十重禁戒、三聚浄戒などが網羅されている。

爾前経成仏

爾前経においてもそれぞれ応分の作仏が許されているが、十界互具、一念三千が明かされていないので有名無実である。

爾前経法華経

日蓮大聖人は爾前経釈尊出世の本懐でないこと、依経とすべきではないことを随所に明かされて、爾前経を破折されているが、立正安国論等では金光明経、大集経、仁王経などの爾前経の文を引証されている。このように爾前経を引証した理由については観心本尊得意抄に、法華経は大綱であり、爾前は法華経のための網目であるから、大綱のために網目を用いる。成仏得道は文としては爾前経に出ているがその義は法華経に限る。したがって開会のうえであらゆる経を引用し、爾前の文を借りて法華の義を顕すのである。爾前経それ自体としては「死の法門」であるが、ひとたび法華経開会の上で用いれば十界互具、一念三千の説明として生かされ「活の法門」となるのである、とされている。日蓮大聖人の仏法からみるならば、釈尊法華経二十八品並びに余経(爾前経)は南無妙法蓮華経を根本としなければことごとく「死の法門」となるのである。

御書 二乗作仏事(590㌻)